みんなで一つの舞台を。

 APSは「劇団のようなものをピアノ演奏の畑でも作れないだろうか……。」ということでスタートしました。

「ピアニストになりたい。」

「ピアノを仕事に出来たらいいけれどそんな仕事はない。」

「ピアノがもっとうまく弾けるようになりたいけれど、どうしたら良いのかわからない。」

そんな人たちがピアノ演奏の舞台を目指す覚悟を持って集まる場所を作りたいと思っていました。

僕はピアノを27歳の時に再開しましたが、再開した当初は何をどう始めてどのようにやっていったらよいのかさっぱりわかりませんでした。多くの人の助けを得て今の僕がいるわけですが、まだ一人前とは程遠い状態のこの今に至るまででさえ、楽なものではなかったし、また、一人では何もできなかったろうと思います。

もし当時の僕と同じような思いでいる人がいたら、その人を迎えて一つの道を示すことができる場所を作りたい。また、一人では難しい事も助け合ってなら出来るだろう。そういう同じ夢をみられる仲間を得ることのできる場所を作りたい。


 「自分たちを呼んでくれるステージがないのなら、自分の上がるステージは自分たちで作ろう。そしてそのステージを凄いものに育て上げよう。」

これは僕がピアノを再開したときからずっと思っていることです。そして、せっかく助け合って舞台を作るのなら、それが一つの舞台になるといい。僕はそう思います。

ピアノという楽器は一人で完結することができます。だからピアニストはつい自己中心的になりがちです。一緒に舞台に立っても自分は自分、他人は他人と考えがちですが、僕はそうではない舞台を作りたい。つまり……、

演奏者は皆、自分だけではなく共演者を紹介しようと考える。

同時に自分はその紹介しようという共演者の思いを受け止められるだけの演奏をする責任を負う。

サポートのスタッフもまた、その舞台に関わることに喜びを感じられる。

そしてスタッフも演奏会を紹介したくなる。

そんな、みんなで作る一つの舞台をいつかやりたい。

会場が小さくたっていいんです。舞台に関わっている人みんなの意識がドキドキするほど高い、そんな楽士団にしたい

APSはこの先ずっと団員を得られないかもしれない。もしかしたら僕一人になってしまうかもしれないし、その先ずっと一人かも知れない。それはそれで仕方のないことだけれど、まず僕が『一つの舞台』の呼び水になるような演奏が出来るようになろうと思う。そして、演奏をしながらまだ見ぬ仲間を待つ事にしようと思う。

いつか背筋のゾクゾクするような舞台に立つことを夢見て……。


昆一成

2013/12/22 APS洋琴演奏会にて

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